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今日本は格差社会であるといわれる。この本は、受験勉強を通じて一生役立つ学力を身につけようという本である。「一方、逆に附属高校からの持ち上がりやAO・推薦入試組など、受験をともなわない『見せかけの高学歴』がいかに危険かについても考察してみたい」とも述べている。その立場から、「受験勉強は役立たないどころか、人生の基礎学力を与えてくれる。そう信じて勉強を重ねてほしい。それが『反貧困』につながる、というのが私の信念だ。」とも述べている。以下、本書のなかの重要な部分を紹介してみよう。 受験勉強は「悪」なのか 「かつて、『日本人は世界一賢い』といわれたのは、受験勉強があったからだと私は思っている。少なくとも、受験勉強があったおかげで日本人の学力レベルは支えられてきた。」ところが、少子化でAOや推薦など楽に大学に入る道が開けたおかげで、日本の子どもたちのかなりの部分が勉強しなくなった。「『子どもたちは受験勉強を経験すべきだ。もう一度、きちんとした受験競争が当たり前の世の中にしなければいけない』これが私の持論である。『受験勉強を通じて基礎学力や競争力を身につけないと、たいへんなことになりますよ。社会に出て使い物にならず、買い叩かれて貧困に陥る可能性が強くなりますよ。無競争社会のツケは、本人ばかりでなく、親にもまわってきますよ。それでいいんですか?』ということである。」 効率的に勉強するノウハウを身につけていないから、社会に出て必要とされるいい意味での『要領のよさ』もなければ、競争もろくに経験していないから、『負けん気』や『リベンジ力』にも欠けている。現在のような無競争社会では、残念ながら、こういう人たちは必要とされない。」「では、受験勉強にどのようなメリットがあり、受験競争を経験した人はなにが強いのか?」 受験秀才は自立した大人 「『受験学力』というのは、何ヶ月あるいは何年か先の受験当日まで、勉強したことをちゃんと記憶していたり、問題を解いたりできる学力のことだ。つまり、長期間にわたって学力を維持することである。」定期テストだけのために勉強し、終わればすぐに忘れてしまうような勉強とは違う。 受験で成果を上げる人を「受験秀才」と呼ぼう。定期試験中心の中心の学校秀才と比べ、「受験秀才の方がいろいろな場面で応用が利き、社会に出てからも『使える人』になる。なぜなら、受験秀才は、なにかの問題にぶちあたったとき、受け身ではなく自分でその問題を分析し、それに応じてやり方を変えて問題に対処することができるからだ。これはつまり、『自立した大人』だということである。」 はぐくまれる自己管理能力 「受験勉強のもうひとつのメリットは、『監督としての能力が鍛えられる』点である。」「自分の有する戦力なり、個性(とくに取り柄)を活かしきる『監督能力』の高い人の勝ち、なのである。断言しておくが、『受験勉強は子どもの個性を殺す』なんて、受験を知らぬ人のたわごとにすぎない。自分の能力特性を知らずして結果が出せるほど、甘いものではない。」 受験組は会社の即戦力 受験秀才は世間では次のように考えられている。「なにかひとつでも取り柄が際だっている人。自分の能力適性がわかっている人、与えられた仕事にてきぱきと対策を立て、求められている以上に自主的かつ要領よく動ける人は、戦略的に仕事をして斬新なアイデアも出しうる。そういうことで、受験秀才のニーズは高まっている。」 現在のような競争社会を生きるために 「『派遣切り』の問題を見ればわかるように、現実の社会では、企業は競争力のない人を容赦なく切り捨てるし、不況による社員同士のサバイバルもますます激化している。大人の社会でこれだけ熾烈な競争が起こっている現実を考えれば、むしろ、子どもたちに競争を経験させないことのほうが、結果的に『悪』ではないだろうか。なにしろ、社会に出てはじめてその厳しさを知り、つらい思いをするのは、競争を知らずに育ってしまった子どもたち自身なのである。」 内定率99%の地方大学では 「数年前、ある雑誌の取材で金沢工業大学に行った。テーマは、『面倒見のいい大学』。当時、金沢工業大学の偏差値は30台だったが、正社員就職率99.7%という驚異的な数字をセールスポイントにしていた。」学生にどうしてこの大学に入って勉強する気になったのか尋ねてみる。「『入学直後から、社会の厳しさをこれでもかというほど教えられるから』そう、この大学では、一年次から『進路ガイド基礎』という科目が必修になっていて、学生たちに自分のキャリアデザインを考えさせていたのである。」さまざまな文化人などが来て、「『今の日本は、こんなに厳しい競争社会、格差社会になっている』『派遣社員の本当の待遇というものはこういうものだ』『フリーターというのはいかに生活が大変か』といったことを具体的に教える。学生たちは、ここで嫌というほど社会の厳しさに直面させられることになる。そこで、みんな、『勉強しないと、そうとうヤバいぞ』と思い、必死に勉強することになるのだという。それが結果として、学生たちの非常に高い就職率に結びついているわけだ。裏を返せば、いかにいまの若者たちが社会の現実を教えられていないか、ということである。」 「日本は豊かな国だといわれるが、相対的貧困率(平均的な収入の50%に満たない人の割合)の国際比較では、主要国の中でアメリカについで二番目に高い(アメリカが世界の先進国の中で一番貧困率の高い国だということもあまり知られていない)」 受験勉強にまつわる常識のウソ 受験勉強で心は強くなる 「『受験の常識』といわれているものには、じつは『真っ赤なウソ』が多い。」「まず、『受験勉強ばかりしていると精神的におかしくなり、犯罪にも走りやすい』というウソである。」逆の事実を示すデータのほうが多い。「受験勉強は心身に悪いどころか、むしろ心身の状態をよくしておかないと合格しないという考え方が、今は主流になっている。たとえば睡眠時間だ。ある中学受験塾の統計によると、塾に通っているこの睡眠時間は、通っていない子よりも長い。なぜなら塾では、『夜は必ず11時までに寝なさい』と指導しているからだ。予備校でも10年くらい前から、『寝る子は受かる』という標語がよく掲げられている。睡眠時間を十分に取らないと脳によくない影響を及ぼし、記憶力が落ちて成績が下がるということが、さまざまな研究や統計でわかってきたからである。さらに現在では、明るく楽観的な子のほうが合格しやすい、ともいわれている。精神的なストレス状態は脳機能を低下させ、パフォーマンスも低下することになる。」 名門校には受験に向けて助け合う文化がある 筆者は灘高の出身である。「『受験名門校の生徒は、友達を蹴落として合格しようとする性格の悪い子どもたちだ』と言う人があるが、これは受験のことを全く知らない人のセリフである。私も灘高時代よくやっていたことだが、いい受験情報が入ったらみんなに教え、『おまえもいい情報を掴んだら、おれに教えてよ』と言ったりすることがよくあった。」「仲間と助け合うことによって、勉強の効率は上がり、高いパフォーマンスが得られる。同じ釜の飯を食い、切磋琢磨した意識が強いから、仲間意識も強くなる。受験を通してこうしたメリットを知っておくことは、社会に出て仕事をするとき、とても役に立つ。仕事はすべて人との共同作業であるからだ。」おかしな学校ほど、「『受験は戦争だ。まわりはみんな敵だと思え』と、生徒に発破をかける愚かな先生がいたりする。」 「学歴や学力は遺伝する」というが、単純に遺伝するようなものではない (これは親の話ですが) 最近の研究では、親が高学歴だと子どもの学歴も高くなるような傾向ははっきりしている。しかし、学歴や学力は単純に遺伝するようなものではない。「親が東大卒や京大卒の(筆者の)同級生たちが成績を上げたのは、中学一年の一学期から、親が勉強に対して手を抜かせないようにしていたからだ」った。そういう親なら、学力と関係の深い「生活習慣についても、子どもに的確にアドバイスができる。だから子どもの成績がよくなるのだ。」「親の考え方や指導によって、子どもの成績には差が出てくる。」ところが、いまの親の中には異常なまでに学力や学歴について意欲のない人が見られる。「『学歴をつけたところで、それがなにになるんだ。一生懸命勉強するなんてアホくさい』『しょせん、できる子には勝てないのだから、勉強させるのはお金と時間の無駄』などという考えを親が持ってしまうと、子どもも当然、同じように考えるようになる。」「いまの時代は、親が手をかけているかどうかで、子どもの能力は大きく左右される。親が低学歴であっても、しっかり勉強させている子は当然、勉強ができる。それだけでなく、スポーツも音楽もけっこうできるし、コミュニケーション能力も高いといえる。逆に親が子どもにまったく手をかけないと、勉強もスポーツも音楽もできないことになる。やらせないのだから当たり前だ。そのうえ、子どもがゲームに夢中になっている間は静かでいいと、無制限にゲームをやらせたりする。コミュニケーション能力も低くなって当然だろう。」 模擬試験で高まる「メタ認知力」 「どのような模試でも大事なのは、自分の苦手を判断することだ。『この部分はまだ覚え足りていないから、今度の模試までにきちんと覚えておこう』『計算ミスが多いから、もうちょっと練習しておこう』『ここはかなり勉強したのにできていない。これ以上やってもあまり伸びは期待できないかもしれない、当面は捨てておこう』といった判断をするために、模試というものはある。このように自分の知識状態や知的能力を認知することを、認知心理学では『メタ認知』という。『この部分はまだ覚えていない、計算ミスが多い』といった形で自分を知っていることを『メタ認知的知識』といい、『だからきちんと覚えておこう、練習しておこう』と自己修正していくことを『メタ認知的活動』という。最近では、メタ認知のなかでも、メタ認知的活動の重要性が強調されている。自分をよくわかっていても、それを改善したり、苦手を捨てるなどという形で対処できなければ、受験では勝者になれない。もちろん、模試を通じてメタ認知的活動を繰り返していけば、模試を受けるたびに確実に成績は上がって、合格に近づくことができる。」「そして、このメタ認知を働かせる習慣をつけておけば、大人になってから、仕事でうまくいかなかったときの分析力や修正力がつき、自分の価値をより高めていくこともできるようになるはずである。」 受験勉強は、計画力、遂行力、修正力のトレーニング 「受験勉強は、なにより計画作成能力や計画遂行能力の向上のため、非常によいトレーニングにな」り、大人になって社会に出てから役に立つ。「受験勉強というのは、勉強法の失敗も含めた自分の『バカ』を治すことである。」 記憶について 「多くの受験生は、さまざまな記憶法を試している。語呂合わせや駄洒落で覚えたり、歩きながら覚えたり。受験勉強していると、いろいろなテクニックを試すことになる。私は、そういう悪あがきはどんどんするべきだと思っている。いつかは自分に合った記憶法に出会える可能性が高まるからだ。最悪なのは、『おれは記憶力が悪いから受験なんか向かない』と、ぷいっとあきらめてしまうことだ。」 勉強も仕事も「やり方」が悪い 「勉強しているのにできない子の多くは、頭が悪いからのではなく、努力の方向性が間違っている。勉強時間を増やすより、いまの勉強法を見直して修正するべきだ。これが、『勉強法を勉強する』とうことである。」「私の経験では、一時間の勉強時間を三時間に増やしてできるようになる子はたくさんいるが、三時間勉強したのにできなかった場合、5時間に増やしてみたところで、たいていはできるようにはならないものだ。」「逆にいえば、『勉強法を勉強しなければいけない』と気がついた時点で、受験勉強はかなり勝ちに近づくということだ。これは社会に出たときも同じで、クルマのセールスマンになった人が売れなかったとき、『おれはセールスの才能がない』と思ったら、辞表を書くしかない。根性主義の人は、セールスに回る件数を」増やす。「そんなことをするより、セールストーク集や接客術のノウハウ本を読んで、アポイントの上手なとり方、あいさつのしかた、商品説明の技術などを身につけるほうがずっといい。」「できなかったときに『頭が悪い』『努力が足りない』と考える人より、『やり方が悪い』と考えられる人のほうが、社会に出てから絶対に強い。」 過去問は市場調査 「過去問を早い時期からやることは、受験勉強の王道である。資格試験を受ける人は、みんな過去ものを使って勉強している。先に過去問をやり、わからないところは教科書を読む、知識が足りないところをきちんと覚えていくというやり方をする人が多い。」「ところが、大学受験の勉強では、過去問をやる時期が遅すぎる子がほとんどだ。」「基礎学力がある子なら、最初から過去問をベースに勉強していくか、少なくとも高三のはじめ(高二の勉強が終わったくらいの時点)で、いったん過去問をやるべきだ。」「合計点主義、合格点主義をとる場合は、そこで、どの科目をあと何点とっていこうという目標を立てることができるし、どこに力を入れて勉強しなければいけないか、どういう勉強が足りないか、入試でよく出る問題と出ない問題はなにか、あるいは、この学校の出題傾向は自分と相性がいいか悪いか、といったことぐらいは掴むことができる。逆にこれができないと、勝てる勝負も勝てなくなる。」「商品の市場調査だって同じだろう。早くから消費者のニーズ(問題の傾向)を知り、開発中の商品の実力・機能(学力)とのギャップを埋めていく。それができなければ爆発的に売れる商品などつくり出すことはできない。」 受験勉強で最後にものをいうのは、「やる気」である 「結局、やる気を高めるノウハウをたくさん持っている人のほうが、受験はもちろん、社会に出てからも強いといえる。あるやり方でやる気が出なかったら、別のやり方を試してみる・・・という試行錯誤が、いろいろできるからである。最近の心理学では、人間の動機づけというのは、人それぞれかなり違いのあることがわかっている。いろいろ試すことで、自分にあった動機づけのテクニックを身につけることができる。」 そして、さいごに著者が強調していることは、受験で「本当の頭のよさ」を身につけようということである。 |
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