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zoom RSS 日米開戦への道(下)避戦への九つの選択肢 大杉一雄 講談社学術文庫 1250円

<<   作成日時 : 2011/11/25 20:44   >>

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上巻は1941年の春〜夏、民間ルートから始まった日米交渉が頓挫し、アメリカの態度が次第に硬化してくる状況で終わり、下巻は1941年の7月ルーズベルト大統領から仏印の中立化提案があって、再び日米交渉が本格化するところから始まる。開戦の四ヶ月前である。

仏印中立化提案と幻の首脳会談

 日米関係が緊迫化する中で、7月24日大統領は無制限国家非常事態宣言に基づいて在米日本資産の凍結を行う。「事態の緊迫を感じた野村(アメリカ大使)は7月24日午後、急遽大統領と会見したが、そのときルーズベルトは次のような提案を行った。」もしも日本が仏印から撤退し、各国がその中立を保障し、各国が公平に仏印から物資を入手できるようにする、というものである。近衛内閣の外相だった「豊田はグルー(アメリカ大使)から大統領提案の説明を受けたとき、時すでに遅しとか、資産凍結で高まった日本国民の反米感情が冷却するまでは仕方がないとか、と消極的な反応を示した。」しかし、アメリカ側の対応は「日本が大統領提案に応じれば、米国は経済封鎖を解くといっているのに等しいのである。(石油輸出の解禁まで言及しているわけではないが、蘭印の参加に言及しており、あとは交渉の問題である)。これを機会に大統領の日中和平乗り出しが期待でき、日米交渉の原点に返り、その再開、妥結のチャンスともなり得たであろう。」また、日本にとっても「いうなりに無条件に撤兵するのではなく、極東の発火点になるようなこの地域を、関係国間で中立化する新協定または共同宣言という形式をとり、仏印資源確保の保障を得て撤兵するというならば名文は十分に立つ。」「日米交渉のなかで、これは米国が行った唯一といってよい建設的提案であり、溺れる日本に投げかけたブイのようなものであった。」「まさにこれは米国の経済制裁に直面した日本が、戦争を避けられうるほぼ最後のチャンスであった。日米開戦へのポイント・オブ・ノーリターンといわれる南部仏印進駐にもリターンする時点はあったといえよう。」しかし、米艦への誤爆事件などもあり、ついに8月1日アメリカは石油輸出禁止に踏み切った。いよいよ開戦不可避という状況となる。しかし、開戦をためらう者も軍部にはいた。そもそも南部仏印進駐そのものが「内心は薄氷を踏む思いであったのである。しがって進駐決定後でも局面の転換は、近衛のリーダーシップによって、決して不可能ではなかった。」しかし、近衛にはそれがなかった。「仏印撤兵は開戦直前、交渉の土壇場になって野村が独自に提案し、ついで日本政府が正式に乙案として提示するが、米国の拒否する援蒋中止の条件が付帯して、受け入れられず、ついに戦争に突入する。近衛はルーズベルトとの直接会談を求めるが最終的には拒否される。「何故国内で軍部と対決してもあくまで撤兵を主張し、米国の要求する条件を整えなかったのか、という批判は免れないだろう。また大西洋会談での米英両首脳の合意事項からみても、仏印中立化提案を受け入れると申し出さえすれば、首脳会談への道は開けていたのではないだろうか。」結局近衛とルーズベルトの首脳会談は実現せず、近衛は退陣する。

第二章 日米交渉の行き詰まりと近衛退陣
 「すでに時間との競争になっていた。米国の石油禁輸に大きな衝撃を受け、首脳会談の見通しも暗く、このまま行けば「ジリ貧」に陥るほかなし、と焦燥感にかられた軍部の解決策は、結局宣そう決意よりなかった。その意図は物資が尽きる前に、そして相手の軍備が増強される前に戦った方が有利であり、資源を獲得して長期戦に備えれば、ドイツの勝利に期待して前途は必ずしも暗くないということである。」「軍部もさすがに米国を負かすことはできないことを認め、長期戦、総力戦は必至であり、ただ他力本願的にドイツの勝利、米国の継戦意志喪失を期待していたにすぎない。すなわち戦争終結の予想が困難という絶望的な心境で、あえて敵の反抗、反撃を考慮せず、対米英戦に突入しようというのであった。」
 このあと、10月2日に米国案が提案される。それは、ハル4原則(領土権の尊重、機会均等、内政不干渉、太平洋の現状不変更)をかかげたものであった。日本側もこれを受け入れるのに賛成する者もいた。では、なぜ日米交渉は妥結に至らなかったのか。日本側のあまりにも強硬な態度と、アメリカ側の理想論の強制に原因があった。日本側だけの責任ではない。

頑強に主戦論を唱える東条
 「東条は、三国同盟離脱、九カ国条約の再現を意図する4原則、満州国の存立にも影響する河北・内蒙からの撤兵などを要求する10月2日案は絶対に受け入れられないことを強調した。これに対して及川(海軍大臣)は、米国案には幅がある、外交上の見込みはある、統帥部の15日までの和戦決定の要望も余裕があるはずと述べ、陸軍と異なる見解を示した。さらに東条から戦争の勝利の自信を聞かれて及川は、この場限りの話としながらも「それはない」と明言し、統帥部の自信は緒戦のことで二年三年後のことは研究中と答えた。」このあと東条と近衛の会談も行われ、東条は「人間たまには清水の舞台から目をつぶって飛び降りることも必要だ」と語り、近衛は「2600年の国体と一億の国民のことを考えるならば、責任ある地位にある者として出来ることではない」と答えたという。このあと、近衛内閣が総辞職し、曲折はあったが東条内閣が成立した。

在外第一線の非戦論 
 「在外第一線の軍部首脳はみな非戦論であったことが注目される。その理由の一つが彼らが大陸の戦場にあって戦争の行き詰まり、士気の荒廃を実感せざる得なかったからである。」

外務省の動向
 外務省首脳部はほぼ非戦論であったという。ただし、豊田外相、天羽次官は迫力に乏しかったという。

10月14日の閣議
 ここで東条が主戦論を再びぶち上げ、豊田外相がわずかに反論するのみだった。

11月1日の大本営政府連絡会議
 この会議で東郷外相、賀屋蔵相が対英米戦争の困難を訴えたが、最終的には戦争に同意した(11月中に米国が妥協しない限り開戦する)。

11月4日軍事参議院参事会
 ここでの東条の説明は、「最終的勝利の自信はないにもかかわらず、ただ目先の優勢にかけて戦おうというのである。軍部も国家総力戦的な観点をもっていたが、思考はここで止まり、いわば、後は野となれ山となれという神頼みの心境であったのである。」

11月26日、ハルノートの提示
 中国からの全面的な撤兵を要求するハルノートが提示され、もはや戦争は避けられない状況となったが、ここでも天皇の最終的な判断があれば戦争という最悪の事態は避けられた。終戦は天皇の聖断という形でもたらされており、明治憲法の内容からいっても天皇が内閣や軍部の判断に従わなければならないという仕組みではなかった。ある研究者は戦後の近衛の自殺は、終戦の聖断を見て、開戦時もこれを用いれば開戦を避けられたという後悔からではなかったかと判断しているが、正否はともかくおもしろい考え方である。
 12月8日朝7時日米英開戦の報道がなされたが、開戦によって(日本による傀儡の)南京政府は大きなショックを受け、重慶の蒋介石政府は歓喜にあふれた。日中戦争に米国を巻き込むことが重慶政府の大きな大戦略であり、これによって中国の最終的な勝利を予想することが出来た。
 日本国民も真珠湾の勝利に一時的に歓喜することはあっても、緊張感を持って事態に対処していた。各地で出征する軍人を見送る人びとにも歓喜の様子はなく、悲壮感が感じられたという。こうして、数年後には日本全体を焼け野原とする大戦争に突入したのである。開戦時、最終的な勝利を信じる軍人はほとんどいなかったという。いちかばちかの戦争だった。天皇すら開戦直前に高松宮に敗戦の予想を語っていたのである。

中国支配体制維持・継続のための戦争 自衛戦争にあらず
 「12月8日に始まった戦争は、それまでの侵略によって得た中国支配体制の維持・継続のための戦争であり、自国を防衛するものではなかった。国際法に違反して現実に他国を侵略している場合、経済封鎖に対抗する戦争だからといって自衛ということは出来ず、対米英蘭戦争は侵略戦争の延長というしかない。」

結果としてのアジア諸民族の独立
 「また日本は、アジア解放のために開戦したのではないことも付言しておく。日本にアジア解放の思想があったのは事実だが、開戦経緯を見れば、資源確保以外に他国のことを考える余裕など全くない状況に追い込まれていたことが判然としよう。開戦の詔勅にもアジア解放などの文言はまったくない。」

結論
 「あの戦争は、その失敗が明らかになった日本の中国支配体制を維持・継続するために、南方地域に侵攻した戦争であった。日本は日中戦争の現実的解決を目指したが、原理原則に固執する米国の反対にあい、勝算の乏しいことを知りながら戦争に突入した。侵略戦争であることは間違いないが、しかしそれは避けることが出来た戦争であり、開戦の責任は日米双方にある。」

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