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zoom RSS エネルギーを選ぶ時代は来るのか NHKスペシャル「日本新生」取材班 NHK出版新書 740円

<<   作成日時 : 2011/12/27 08:03   >>

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2011年の夏頃放送された番組を本にまとめたものであるが、ポイントをいくつかに絞ってより詳しくかかれている印象である。おおまかに いって、前半は日本で一時期大きくクローズアップされた再生可能エネルギーの利用がなぜ進まなかったのかについて、後半は再生可能エネル ギーの先進国スペインと原発大国スウェーデンの現状が書かれている。

日本で再生可能エネルギーの開発はなぜ進まなかったのか

青森県六ヶ所村は、核再処理工場やウラン濃縮工場、高レベル放射性廃棄物の貯蔵管理センター、低レベル放射性廃棄物の埋設センターなど、 いくつもの核関連施設を抱えている。取材班はこの村で、福島第一の事故の影響を取材するが、村民からはこれといった反応がないという。それ というのも、村民の多くが原子力関連の産業で職を得ていたり、関連のある企業などで働いているからである。実は六ヶ所村には風力発電の風車 が多数あることはあまり知られていない。取材班は六ヶ所村で最も多い56基の風車を設置している日本風力開発株式会社に向かう。これらの風車 は実に56000世帯の電力をまかなう能力があるという。日本風力開発は、大手商社出身の社長などが1999年に興したいわゆる独立系のベンチャー 企業である。当時はCO2削減を決めた京都議定書が締結されたこともあって、自然エネルギーへの期待が高まり、大手商社や電力会社が軒並み参 入して、全国で風車の適地を奪い合ったという。北海道に風車を作る会社が多かったが、この会社は東北に適地を求め、六ヶ所村にたどり着い た。今、地元の人を20人雇用し、風車のメンテナンス技術を教える研修センターも設置したという。 ところが、今風力発電事業が岐路に立たされているという。日本風力開発は全国で3位になるまで業績を拡大してきたが、2010年から2年続け て赤字になっている。それは電気の買い取り価格が低下しているからだ。2003年に施行されたRPS(電気事業者による新エネルギー等の利用に関 する特別措置法)法で電力会社が新エネルギーから発電される電気を一定量買い取ることが義務づけられている。しかし、これがわずか電気供給 量全体の1%程度ということで、全国で多くの発電業者が買い取りを希望、そのため買い取り価格が低下しているのである。しかも、業界1位の 会社が東京電力系、2位の会社も電力事業者の電源開発。こうした大手の会社が低い価格で入札するので、自然と買い取り価格は低下する。「電 力会社が風力発電の拡大を妨げようとしているのではないか」という声も起きるわけである。日本の風力発電事業は収益をあげられない体質に 陥ってしまった。 では、なぜわずか1%にとどまってしまったのか。その方向性を決めたのは10年ほど前に行われた経済産業省の審議会の議論である。議論の内 情を確かめると、委員のなかの電力会社系の人々の声が大きかったという(ちなみに委員のなかには再生可能エネルギー関係の人もいた)。 「(自然エネルギーは)義務教育をやっと卒業できる実力しかない」「ノーベル賞でももらうかのように、家庭教師をつけ、なんだかんだとやれ ば、費用対効果の面から非常に問題だ」などの発言である。 「それは、『電力の安定供給』を担ってきたのは『原子力』であり、『自然エネルギー』がそれに取って代わることは考えられない。さらには、 ほかの何かに代わってもらっては困るということではないか。2000年当時、すでに全国で50基以上の原子炉が稼働し、発電電力量に占める割合 は約30%を超えていた。原子力で大量に発電した電気を家庭や工場へ安定的に送るという、電力会社にとって『効率の良い』供給システムを作り 上げてきたため、不安定な自然エネルギーにわざわざ膨大なコストをかける必要はないということだ。原子力発電所の建設には、用地の買収、建 設、試験、稼働まで、膨大な年月とコストがかかる。その過程では、地元住民の反対で建設計画が頓挫することも珍しくない。初期投資は膨大だ が、いったん稼働にこぎつけられれば、『動かせば動かすほど、金を生む機械』(経済産業省OB)というほど電力会社にとってありがたい存在 だった。」これでは、自然エネルギーの利用は進まない。 「自然エネルギーの利用を義務づける法律が制定されてからおよそ9年後の2011年8月、自然エネルギーの利用を促進させる新しい法律が国会 で成立した。『再生可能エネルギー買い取り法』である。今度は、電力会社に『一定量の利用』を義務づけるのではなく、一定期間、『固定価格 での買い取り』を義務づけることが制度の柱だ。買い取りの価格や期間など制度の詳細は先送りされたが、価格や期間の設定によっては、自然エ ネルギーによる電力の供給量が爆発的に拡大する一方で、電気料金の値上げという形で国民が大きな負担をしいられることもあり得る。」 「果たして日本は、高い目標、本当の意味での『目標』を掲げられる国や社会なのだろうか。」

スペインの模索 固定価格買い取り制度の光と影スペインの模索 
 「年間を通じて吹き抜ける貿易風に恵まれたスペインでは、2011年の時点で、全土の約一千カ所に風力発電所が設置されている。発電能力は約二万メガワットと、二十年あまりで一万倍に増大している。風力発電の推進を後押ししたのは『固定価格買い取り制度』だ。」これは、世界各地「2010年の時点で、87の地域が導入している。」スペインは「なぜ、自然エネルギーの拡大に踏み切ったのか。そこには、石油や石炭など化石燃料の80%以上を海外からの輸入に頼るという、スペインのエネルギー依存体制の抜本的な見直しが迫られたという事情があった。」買い取りを義務づけられた電力会社はどう考えたのだろうか。「当時を知る幹部は、『風力や太陽光による電気を買い取ることは、研究費を負担するようなものだと考えた。』と前向きに捉えていたことを明らかにした。」「スペイン国内の発電量の割合は、2010年、風力発電が15%となり、天然ガスを使った火力発電や原子力発電に次ぐ割合を占めるまでに拡大した。」「自然エネルギー最大の課題は天候に左右される発電量の不安定さだ。スペインは全国の電力供給を一元的に管理するシステムを柱に、その課題を克服している。」「まず重要なのは『発送電分離』による総合的な管理だ。」スペインではコントロールセンターを設けて管理をしている。「まず、気象状況や地形などをもとに、風力の発電量を随時予測。不足する場合には火力や水力などの発電所に発電量を増やすよう24時間体制で指令を出し、補う。」日本は原発がベースロード電源だが、「スペインでは風力発電が『ベースロード電源』となっているのだ。」風車の部品は一万点とも二万点ともいわれ、風力発電が四万人の雇用を創出したという。また、地域経済の活性化にも役立っている。「一方、スペインでは、固定価格買い取り制度の難しさが顕在化している。」「問題となったのは、2007年に太陽光発電に関して行われた制度改正だった。」買い取り価格が上がったことで、「太陽光の発電事業が一大ブームとなり、それまでは発電事業に縁のなかった人たちまでが殺到して発電を開始した。」「利回りの良い投資先として太陽光発電事業に次々と参入した。」「2007年には累積の発電量は670万メガワットに上った。」「これは2010年までの目標として、国が予想してきた累積400万メガワットを大幅に超える結果となった。」「電力会社が発電事業者に支払う買い取り費用が増大し、2008年だけで前年の65%増となった。」その結果、電力会社は2「008年度は約37億ユーロ(約4300億円)の損失を抱えることになった。2000年代に入ると、この仕組みを問題視する声が聞こえ始めていた。」電力会社は「損失の穴埋めについて国に対応を迫っている。」「政府は電力会社の過剰な損失を増やさないため、2008年から順次、買い取り制度の見直しに踏み切った。」「これによって事業者の収入は30%の減額になるという。27万ユーロの借金をしてメガソーラーに参画したガレヨさんは、返済計画が崩れ、不安を隠せない。「電気料金による上乗せを避けてきた政府は、電気料金の引き上げを検討しており、消費者が負担する制度に変える方針だ。」「スペインの太陽光発電政策については『太陽光バブルの崩壊』と揶揄する意見もある。しかしせいどによって導入が促進され、早期に目標を達成することが出来たことも、事実として受け止めることが必要だろう。」「2010年のスペイン政府のまとめでは、再生可能エネルギーは36%を占め、目標を上回った。それらが拡大した分、原子力発電の割合が縮小している。スペインでは現在8基の原発が稼働中だが、1994年に法律で新規建設が凍結されたため、増設の予定はない。」「運転中の原発は2020年まではそのまま稼働される予定だ。」そのころには自然エネルギーはさらに増え、原発を補うことになる。

スウェーデンの選択 半世紀にわたる試行錯誤
「この国では、エネルギーのあり方を国が決めるのではなく、市民の判断に委ねているという。」「市民一人ひとりが様々なメニューのなかから発電方式を直接選ぶという仕組みを、スウェーデンでは、どのように可能にしているのだろう。」「発電方式を市民が選べるスウェーデンで、近年大きな伸びを示しているのが風力発電だ。1990年代、全体の発電量に占める風力の割合はゼロに等しかったが、2001年に0.3%、2005年には0.6%、2010年には2.4%とこの5年間で4倍に伸びている。その象徴が、スウェーデン第二位のハンバーガーチェーンだ。2007年、店舗で消費する電力を風力や太陽光に変更したところ、売り上げが急増。市民が自分で風力を選ぶだけでなく、風力を選んだ店舗を消費者が選ぶという現象まで起きているのだ。」不安定な再生可能エネルギーをどのようにうまく運用するのか。スウェーデンのケースをみると、二つの理由が浮かび上がってきた。一つは、一国内の一体的な運用を超えて、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェイという国々が国境を越えて電力を一体的に運用している。一つひとつの国は小さいが、これらを合わせれば2500万人あまりの大きな市場となる。もう一つは、消費者による電力の使用状況がリアルタイムに電力会社に送られるシステムが取り入れられていることである。スマートメーターといわれる計測機器が全国の家庭の9割に設置されている。
これによって、高い精度の電力需要予測が可能になる。それをもとに電力を効率的に運用するのである。そればかりか、電力の需要が高まると電力料金が上がり、電力の使用を控えるように誘導し、逆に需要が低くなると料金が下がり、消費者の資料が高まるという具合に、市場のバランスを取るようになっている。「スウェーデンは、知られざる原発大国だ。人口900万人余りに対して現在10基の原発が稼働している。単純計算すれば、人口一億二千万人に対して133基の原発が稼働する規模だ。背景にあったのは日本同様のオイルショックである。国内に石油や石炭の資源が乏しいこともある。しかし、スリーマイル島の原発事故が冷水を浴びせた。国民投票が行われ、長期的に原発を廃棄することになったのである。しかし、予定通りの廃棄は進んでいない。それでも、自然エネルギーへの以降は確実に進んでいる。1991年当時、原発が52%、水力が44%であった。水力も自然破壊が著しくこの国ではこれ以上に増やさないことになっている。そして、2010年には原子力が38%、水力が46%、自然エネルギーが10%となった。福島の事故後もスウェーデンでは冷静な対応が続いている。スウェーデンのあり方は、自分たちの使うエネルギーは自分たちで決めるという民主主義の問題に行き着くように感じられる。
 スウェーデンのエネルギー庁の長官は次のように語っている。「民主主義的発想の基盤は、個人が選択の力を持って行動し、結果に責任を持つということです。もしも、そんな力と機会を奪われてしまったら、社会には非建設的なシステムができあがってしまいます。個々人が自分には力があると実感し、その力を使っていくことで、持続可能な社会につながっていくのではないかと思います。」そんな社会は来ると思いますかという質問にはこう答えている。「はい。世界のなかで、まず日本にこそ来るのではないかと私は考えています。そのような力を行使しなかった場合、どんな危機が待っているのか、日本人はいま非常に強く感じているからと思うからです。日本は非常に早く変わっていくかもしれないとすら思うくらいです。」

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