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zoom RSS 「お手本の国」のウソ 田口里穂ほか  新潮新書 740円

<<   作成日時 : 2012/01/01 15:42   >>

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 帯には、「フィンランドの教育法、フランスの少子化対策、アメリカの陪審制度、イギリスの二大政党制、ホントにまねして大丈夫? 現地からのリアルレポート」とある。実際にここに書かれている国々の例は、日本が学ぶべきお手本とされているが、実際現地では日本の人々が考えているように、理想的にことが進んでいるのかどうか、冷静に検討すべきではないかと私自身がかねがね考えていたので、これは時宜にかなった本といえる。なお、それぞれの章を現地で暮らす日本人が書いていることもこの本の大きな特徴だろう。

フランスの少子化対策 中島さおり

 まず、一番最初に取りあげているのが、フランスの少子化対策。日本では合計特殊出生率が1.3となって、このままでは国の活力が奪われてしまうのではないかと大問題となっている。これに対してフランスの合計特殊出生率は2.0。最低限度国の人口を維持していくためのぎりぎりの数字は確保できていることは日本との大きな違いだ。なぜ、フランスではたくさんの子どもが産まれるのだろうか(ということは、フランスが少子化対策に成功していることそのものはウソではない、本当の話である)。
 この本によれば、日本では知られていないPACSという制度がフランスにはあるらしい。実はこれなどがフランスの高い合計特殊出生率に影響を与えているようだ。「一方、10年ほど前から結婚とは別に、PACS(社会民事連帯)という、二人の結びつきを認知する法的枠組みもできた。養子を迎える権利がなかったり、一方的に解消できたりするなど、法的な保護は結婚より幾分弱いのだが、その身軽さが却って人気を呼んで、「結婚」に躊躇する若者の心を捉えている。PACSは本来、同性愛のカップルに結婚を認めない代わりに与えることにしたものだったのだが、蓋を開けてみたら異性愛カップルがどっと押し寄せ、今やPACSの9割は異性愛カップルだそうだ。近年の婚外子(結婚していない男女に産まれた子ども)が増えているのには、このPACSも一役買っている。」なぜ、結婚していない男女がたくさんの子どもを産むのだろうか。「実はその理由として日本でよく言われるのは、『フランスには非嫡出子差別がない』ことである。出生率を上げるために日本も婚外子を増やさなければならない、したがって婚外子差別を撤廃しよう、という論理展開になる。」婚外子差別とは、たとえば婚外子(非嫡出子)の場合、親からの相続分が2分1になるなどのことをいう。
 フランスに関して少子化対策としてよく話題になるのは次のことである。「目玉の少子化対策として、2人目の子どもから一律に支給される児童手当(日本の子ども手当のモデル)、出産費用ゼロ、産休の終わりから子どもが3歳になる誕生日まで取得できる育児休暇、その間の所得保障、保育料無料の公立幼稚園、延長保育や保育ママなど託児システムの充実、子どもが3人以上の家庭の交通機関や美術館利用時の割引パスなど、さまざまな政策が並べられる。」しかし、これらが少子化対策として作られたものではないと筆者は考えている。「日本のように『少子化』が大々的に心配されたという印象は、1987年からフランスにいる私は、少なくとも持っていない。第一、『少子化対策』という特別な言葉がない。」つまり、これらの政策は少子化とは関係なく以前からあったのである。この他にも、フランスには、低所得層に対するセイフティネットや、女性労働支援策は充実しており、子どもを産んで育てやすい社会であったことは確かである。
 では、世界の先進国が少子化で苦しむ中、フランスではなぜそれが問題にならないのだろうか。一番影響の大きい問題は何か。筆者は次のように考えている。「出生率に影響を与えているのは、若者のカップル(同居)率ではないかと私は思っている。具体的に見ると、25歳から29歳の年齢層で、結婚しているフランス人は26.8%だが、同棲しているのが41.5%。となると、カップルで暮らしているのは、68.3%ということになり、同棲率の低い日本と較べると、若い男女の同居率がかなり高くなるのではないだろうか。初めに異性と2人で暮らし始めた年齢は、20歳から24歳というのが成人の過半数だ。30歳過ぎても親と同居率が高いという日本とずいぶん違う。フランスは若年失業率は25%とかなり高い。」「日本で若者が『結婚できない』状況と似ているようなのに、なぜだろうか。違う点を思いつくだけ挙げていけば、」「20歳から24歳といえば学生の年齢だが、フランスでは高等教育機関でも授業料がかからないことが多い(一部のグランド・ゼコールは生活費も支給)。学生に対する、また低所得者に対する住宅賃貸援助がある。医療保険はすべての人が入る(収入がないと、保険料は無料)。カップル社会の圧力か、『早く親の家を出ていけ』というプレッシャーがある。そのあたりだろうか。」また、日本のように新卒一括採用ではないので、最初は非正規などで働きながら、30くらいで正規雇用につく例も多いことも影響しているかもしれない、という。
 なるほど、子どもがたくさん産まれる国にはこんな仕組みがあったのである。

世界の教育大国に「フィンランド・メソッド」はありません 靴屋さちこ

 フィンランドに関して「なんだか好感が持てる国、すばらしい国」から、日本ではよりイメージは具体化してきている。「その要因は主に二つ、フィンランドの教育を世界一たらしめたという『フィンランド・メソッド』と高負担・高福祉で知られる福祉システムの存在が挙げられるだろう。」「この国の生活の本当のところをお話ししたい。」
 フィンランドはPISAのテストで世界一といわれるようになったが、「夫と同様、自国の教育事情に自信を持っているフィンランド人は多かったが、さすがに『世界一』とまでは思わなかったらしく、『どうして?』と真剣に話題にしている人たちの様子が興味深かった。」フィンランドの教育の様子を述べると、日本と同様の633制だが、入学が一年襲い。ただ、「就学前教育が用意されており、対象児童の99%が参加している。プリスクールは、保育園の施設内もしくは小学校の施設内に設置されているのが一般的で、保育園や学校と同様に公の施設だ。そこではアルファベットの大文字や1から10までの数字と時計やカレンダーの読み方など入学前に必要な基礎知識が教えられる。給食も込みで無料。」「小学校教育へのスムーズな順応を促すというもの」だ。小学校に入ると、「一クラスの人数は最大25人までと決まっており、全校生徒数が50人以下という学校が40%を占める。」「授業時間数はOECD加盟国の中ではもっとも少なくなっている。」教育には国を挙げて費用をかけている。「国内総生産(GDP)に占めるフィンランドの教育費の割合は5.5%と、日本(3.3%)の1.5倍を優に超えている。」これはかつて経済危機の時、「当時のヘイノネン教育相が『このような危機の時こそ、教育に投資することが将来の経済成長を生み、雇用確保につながる』と説き、教育費の大幅増額を要求したのだ。」「大きな予算があるからこそ、義務教育では学費はもちろんのこと、給食費を含めて全て無料だ。」教育の現場はどうなっているのか。「一番の注目点は、現場の先生の裁量に大きく任されていることだろう。」「1994年から教育省や国家教育委員会からのトップダウンの統一指導要綱が廃止された。」「生徒たちを見ながら自分で授業の方針を決めたり判断を下したりする過程は、先生にやる気を与え、授業のやり方ひとつで生徒に与えるインパクトを強く実感させるという。」「さらに、この国では教職はクリエイティブな職種と見なされており、大学でも教育学部は競争率10倍という狭き門の人気学部だ。」
 さて、肝心のフィンランド・メソッドだが、そうしたものは存在しない。マインドマップもあまり使われてはいない。この言葉はフィンランドの教育を紹介する日本人が作ったものである。フィンランドの教育について誤解は他にもある。落ちこぼれを作らない授業が行われているといわれるが、「これは確かに、授業中に他の生徒より先に課題が終わってしまった生徒が席を立ち、手を挙げて、助けを求めている同級生に教えにいく『助け合い』という習慣によって実現している。」
競争がない、ということもよくいわれるが、「高校に関しては学力ランキングが存在しており、卒業シーズンの5月になると大手タブロイド紙に毎年大きく掲載される。」「クラスの中のクラス分け」日本でいうところの習熟度別授業も小学校から存在する。ただ、次のようなことはいえる。「ただでさえ少ない人口(北海道の面積に540万人)を、子どもの時点での学力でふるい分けていたのでは、国を担っていく進学組が本の一握りしか育たない。」「まずは誰をも排除することなく平等に機会を与え、可能性を伸ばすことが、少ない人口で効率よく国力の充実を計るための必須課題だったのだ。」

フィンランド住みやすさ
 「教育の良さの次に話題になることが多いのが、この国の『住みやすさ』だろう。」「ニューズウィーク2010年8月16日号で発表された『成長力&幸福度国別ランキング』の第一位に輝いたことにはっきり表れている。」「筆者の心証としてもフィンランドは住みやすい国だ。その最大の理由は、北欧諸国最大の特色とも言うべき高福祉高負担社会。病気や事故、失業や離婚など不慮の事態や誰もが避けられない高齢化という問題に対して不安がないというのはどんなに安心できることか、住めば住むほど実感できる。」日本の消費税に相当する付加価値税が23%。ただ、生活必需品の食料品は13%、医薬品は9%と抑えられている。「手厚い社会保障があるというのは、いざという時に備えての貯蓄を減らし、それらにまつわるストレスをも軽減する。」「2011年5月現在のフィンランドの家計貯蓄率はマイナス2.3%という。」ただ、医療の順番待ちは有名で、早く医療を受けたければ、自己負担をしなくてはならない。また、冬になると氷点下20から30度。太陽を見ることも少ない生活は人々の気持ちを暗くし、自殺が多いことも有名である。この面から、けっしてフィンランドを暮らしやすい国というわけにはいかない。「これだけの自然条件の上に国を作るとなると、その仕組みは、むしろその真逆に、すっかり気を許せるほどの社会制度や施設、教育制度をもって、暮らしやすさを追求しないことには、普通に生きて行くことはできないのだと言えなくもない。」
どうやらいいことばかりではないらしい。

この本には、この他に、イギリスの二大政党制、アメリカの陪審制、ニュージーランドの自然保護、ドイツと戦争責任、財政破綻しても食べていける観光立国ギリシャ が取りあげられているが、日本で知られている常識がどのように作られたのか、それが現地では実際どうなのか、いずれも興味深い話題である。

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義務教育なのに給食費よこせはおかしい
1 :番組の途中ですがアフィサイトへの転載は禁止です:2012/04/12(木) 12:13:13.40 ID:A/JK7Rbm0 ?2BP(1111)http://www.news-postseven.com/archives/20120412_101168.html生活に困窮し、税金や保険料を払え... ...続きを見る
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日本で出生率を上げる最も効果的な方法は、マイナンバー連動DNAデータベースで実父確定、養育費強制徴収、払えなければ懲役の制度を早急に作ることです。日本では放置子容認論に温かく、中国のように戸籍につけるのに婚外子は罰金なんて要らないし、これでマスコミの日本は婚外子に厳しい嘘も解消できます。
なおみん
2016/01/09 21:13

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