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zoom RSS 石川啄木 その釧路時代 鳥居省三著 釧路市発行釧路新書7  1000円

<<   作成日時 : 2010/08/08 22:04   >>

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 石川啄木は明治41年小樽の新聞社を辞め、釧路新聞の記者として釧路にやってきた。小樽日報と釧路新聞の経営者が同じで、小樽日報にいづらくなった啄木の才能を惜しみ、釧路新聞の副編集長格で採用されたのであった。この本は、幣舞橋の南側に当時の釧路新聞社屋を再現した建物があり、そこが啄木資料館になっていてそこで購入したものである。現在の釧路市の中心街は幣舞橋の北側にあり、南側は商店もまばらな住宅街になっているが、明治末期には幣舞橋のすぐ北側に停車場があり、そこから幣舞橋をわたったこのあたりが市の中心街だったのである。そこをさらに南に進むと波止場があって、各地への船便が出ていた。啄木資料館には啄木が勤務した頃の釧路新聞のコピーがいくつも置かれていたが(啄木の書いた記事を読ませるのが目的)、それらの新聞の下の方には船便の出航予定が書かれており、人々はそれを見て貨客の利用を果たしたもののようである。行き先は、近くでは厚岸、花咲(根室)、函館、遠くは神戸、横浜などがある。啄木が釧路にいたのはわずか70数日間、しかもそれが真冬の1月から3月までの間で、せめて釧路が一年で一番よい秋に滞在したならばもう少し違った釧路生活になったかもしれないとこの本の筆者も述べている。啄木はたいへん力を込めて、またたくさんの記事を書いて、新聞社に貢献したようであるが、その一方で料亭通いにも情熱的に取り組んだようである。釧路に到着後にもさっそく料亭で歓迎も兼ねた打ち合わせを行っているが、連日の料亭通いを始めたきっかけは鉄道調査団を迎えての歓迎会であったという。啄木が利用した料亭は三軒あったというが、いずれも幣舞橋の南側の今ではけっこう寂しい住宅地になっているところに立地していた。そのうちの一軒を今回の旅行で夕刻訪ねてみたが、道行く人もない寂しい公園となっていた。そして、料亭通いには芸者がつきものである。そもそも新聞記者ごときに芸者つきの料亭通いが毎晩のようにできるのかと思うが、啄木はこの釧路で20円の給料を得ており、渋民村の代用教員時代が5円だったことを思えばなかなかの好待遇である。明治末の場合、現在の金銭価値に直すためには4000倍しろというからその計算では80万円ということになっていささか高すぎるかもしれない。とはいえ、啄木は毎日たくさんの記事をなかなかの美文で力を込めて書き、そして夜は料亭で飲み食い、深夜に帰宅したのである。そのなかでなじみになっていったのは小奴という女性である。当時まだ二十歳前の少女であり、その手紙などをみるとなかなかの文学少女でもある。幣舞橋のすぐ南には小奴というバス停があって、そのすぐ前に小奴の碑が建っている。釧路の啄木といえばこの小奴ということになっているようである。それには、小奴が昭和30年代まで生きて啄木との思い出を語ったということも影響しているらしい。啄木の資料館やこの本のなかには様々な小奴の写真が残っている。アイヌ文学研究の金田一京助と啄木との関係は有名だが、その金田一が戦後釧路を訪ね小奴とまだ残っていた釧路新聞社屋を見ている写真などが含まれる。しかし、啄木は小奴との関係を深める一方で梅川操という看護婦をも知ることになる。しかも、梅川と小奴は互いの存在を知ることとなり、ある夜かなりやっかいな事件が起きるのである。そして、これをきっかに啄木は出社しなくなり、結果として啄木は釧路を去ることになるのである。昭和30年代になってからこの本の著者は小山操(梅川操)に頼まれて釧路図書館で啄木の資料を調べることになったらしいが、こうした点で啄木の生きた時代はついこの間までまだ続いていたのである。啄木が暮らし街を歩き、啄木の本に関する本を読み、啄木の歌を読んで、釧路にも啄木にも近づけたような気がした。

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内 容 ニックネーム/日時
私は神奈川県に住んで、啄木に関するあらゆる文献を
紹介するHP(湘南啄木文庫)を主催する者です。
今朝ほど、偶然に見かけたブログの表題に、旧知の
鳥居省三先生の名を見かけて、思わず読み入りました。

私は生前の鳥居省三先生と、少しばかりご縁があって
知遇を得た者の一人ですが、
先生の人柄と学識には、いつも感嘆しながら、そのお話に
聞き入ったことなどを懐かしく思い出しました。

本書は昭和55年に刊行されたもので、北海道の啄木を論じては、
他の追随を許さない名著と私は思いますが、何故か、
発行元の釧路市はこの本を長い間、品切れとしてきました。

それがこのたび「港文館」で販売していた、と知って
本当に嬉しく思いました。(復刊されたのですか?)

釧路の啄木を論じた本は他にも多くありますが、
私が鳥居先生の著書の他におすすめ出来るのは、
北畠立朴著『啄木に魅せられて』(平成5年著者刊)が
一冊あるだけです。

北畠氏の研究は、地域に根ざした研究で、啄木を心から
敬愛する著者ならではの、好著で、優しい眼差しを感じます。私は、こちらも大好きです。

本格的に単独で啄木を採り上げた著書で推薦できるのは、
残念ながらこの2冊の書だけです。(私の知る限りでは)

北畠氏は鳥居先生の正統な?釧路の啄木研究を継承し、
それを今も市民や道民に伝える活動をされております。
釧路市内では、連続した「啄木講座」を開催して、
その講座が昨年100回を超えた、と聞きました。
機会がありましたなら、探索して見て下さい。

最後になりますが、大兄様の的確な読書力に、
あらためて心からの敬意と感謝を申し上げます。
湘南の啄木です。
2010/08/09 09:00
湘南の啄木様へ
どこにお返事を書いていいか分からないために、ここに書きます。いろいろ参考になることをお教えいただきありがとうございました。紹介していただいた本など、探してみます。ありがとうございました。
mkubota
2010/08/09 19:18

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